おめでとう50周年!百万本のバラ・コンサート(2015年6月14日 於NHKホール)~71年分の歌を届けたい~<特別号>


  
  
◆Love Farmers Market@代々木公園ケヤキ並木
 
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6月14日。朝方降っていた雨が上がるお昼頃、NHKホールそばのケヤキ並木に車が到着。ドアが開いて鮮やかな青い洋服に身を包んだトキコさんが現れた。今日は一日、DVD制作のムービーカメラマンの皆さんも一緒。トキコさんは可愛らしい笑顔で色んなお店を見て回りながら、「これなに?」と試食をしたり、手に取ってみたり!楽しそう。
 
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この日は、普段Peace on Earthや鴨川自然王国などを通じてトキコさんにゆかりのある方々がテントを連ねるLove Farmers Marketが開催!雨も上がって大勢の人で賑わいお祭りのよう!トキコさんの50周年を祝うメッセージボードやダルマも!
 
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「じゃあ、行ってきます!」ニコニコと、NHKホールへと歩き出すトキコさん。これから、どんなステージが待っているのだろう。そんな重圧は全然ないような軽やかな足取り。
 
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ホール2階では、この日限りのトキコさんのライブ写真展もありました。今まで私が撮らせて頂いた多くの写真の中から、11点の写真パネルが静かにお客さんを待ちます。
 
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外に出てみると、15時15分の開場を待つ人々で、NHKホールの入口はものすごい行列!!開演は16時。全員の入場が開演に間に合うかな?と心配になる程のお客様の数!!
 
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このツアーのためにトキコさんが作成した超力作の公演パンフレットは読みどころ満載。ラトビアと日本のこと、セットリストの曲目解説、今迄のトキコさんの旅の記録や、このコンサート・ツアーへの想い。入場するお客様一人ひとりに配られていました。
  
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目が覚めるような、ロビーに飾られた美しい花の数々!普段のトキコさんのコンサートにも、すごい量のお花が届けられるけど、今日は一段とすごい。さあ、そろそろトキコさんのところに行かなくちゃ・・・。
 
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楽屋からは微かにトキコさんの声出しが聞こえる。廊下にはオーケストラの皆さんがそっと現れては、次々とステージ袖へと消えていく。カメラを数台ぶら提げて静かにトキコさんを待つ、開演前の登場前。この時間がいつも「しん」、と撮影前の集中を高めてくれる。
 
◆開演直前のトキコさん
 
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ステージの袖。静かに待つリエパーヤ交響楽団のメンバーとトキコさんが、笑顔でそっと握手をしていく。自分の50周年を記念する大切なコンサートの直前って、どんな気持ちなのかな~?と思っていると、ふいに「撮って」と言われた。レンズを向けると、楽団メンバーと一緒に、ふんわりと包み込むような笑顔で笑ってくれた。
 
◆第一部開演
 
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先にオーケストラ、パーカッション、ピアノ、指揮者の皆さんがステージに出ていく。会場から拍手が沸き起こる。一呼吸おいて、トキコさんが白い鹿革のドレスに身を包んで現れると、もっと大きな拍手の渦にのみ込まれていく。
 
 
♪Love Love Love
♪時には昔の話を

いつもより、ゆったりとしたテンポに感じられる、丁寧で味わい深い「時には~」が終わると、トキコさんが話し始めた。
「今日は、私の50歳の誕生日へようこそ!!(笑)」
歌手として50歳。実年齢はコキワン(古希+1年)のトキコさん。会場に笑いのどよめきが起こる中、トキコさんは爽やかに話し続ける。
 
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デビューした21歳の頃、歌手という特別なものに生まれ変わらなくては、という気概で必死にスタートしたというトキコさん。
「でも50年たってみると、歌手とは特別なものになることではなくて、生まれてからの自分自身を一つ一つ確かめるような時間だったと思います。
不思議なことに人生が後半にさしかかると最初の出発点が近く感じられる!・・・じゃない?(会場笑い)そういう意味で、今日は、私の71年分のコンサートだと思っています。じっくりと聴いて行って下さい!」

会場に暖かい空気があふれ、より一層拍手の波が力強く広がった気がした。
 
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「では、一気にどん底の歌になっちゃうけど・・・聴いてください。難破船!!」
ちょっと面白いMCに会場が再び笑いに包まれる中、それを飲み込むように壮大なイントロが始まり、ホールごと深遠な世界へグンと沈んでいく。
 
 
♪難破船
♪今あなたに歌いたい

 
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~あなたのために歌いたい どこかで聴いてるあなたへ~
これは和田アキ子さんの20周年の時にトキコさんが贈った歌。
「20周年の贈り物どうしようかなぁと思いながら眠ったら、夢の中に和田アキ子さんが出てきて、歌ってくれた歌なんです!歌い終わるまで目は開けなかったの!消えちゃうからね!(笑)そうして、出来た歌です。不思議でしょう?」

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そして、震災の時はギターを手にお母さんと京都へ避難したトキコさん。
「歌なんか、何の役にもたたない、という雰囲気が世の中に漂ったんですが、私にはやはり歌しかない。どこで何が起こっても、ギターさえあれば私は生きていける、という思いでいました。では、丁度震災から一週間くらいたったとき、作った歌です」
 
 
♪今どこにいますか
♪青いこいのぼりと白いカーネーション

 
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~今日一日を 生きましたね 明日のために 眠りましょう~
~あしたは来る 必ず来る 太陽は 回ってる~
「いまどこ~」は震災の歌なのに、時折なにか自分が苦しいときに思い出すと、暖かい手でぐっと背中を押される気持ちになる、不思議な応援歌だ。「今日一日を 生きましたね」このフレーズの後トキコさんが、いつも唇をきゅっと結ぶ。覚悟とか、励ましとか、自分の胸を精一杯張る感覚だとか・・・震災で感じた、一日を生きる凄さを忘れずにいたい。
 
 
♪広島愛の川
♪愛を耕すものたちよ

 
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「愛、育ててますか・・・?(会場笑い)人は生まれた時から憎しみを持って生まれてくるわけじゃない。社会が憎しみを育ててしまったのね。憎しみではなく、愛を育てましょう。今日一日をちゃんと生きて、一日ずつを積み重ねて、未来を引っ張ってこれると思えば、とても丁寧に自信をもって生きていけると思います!」

この生きることを肯定する力、明るい方向へと向かう心がとてもストレートで柔らかく、フジロック等の夏フェスでも若者の心に届くトキコさんの魅力、真骨頂だと思う。
歌い終わると笑顔で颯爽と去っていくトキコさん、そして会場からは鳴りやまない拍手がずっとずっと、続いた。
 
 
◆第二部のオープニングはワルツから!
 
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♪Waltz Melancholic
 
トキコさんも、指揮の籾山和明さんもいない。リエパーヤ交響楽団が単独で奏でる優しい音色の世界に身をゆだねていると、どこか欧州の田舎の、のんびりした風景の中で昼寝をしているような気分になる。
 

♪さくらんぼの実る頃
 
イントロが流れて、一瞬止まるとトキコさんが真っ赤なバラの衣装で登場、会場からは一気に華が開いたようなキラキラした拍手が。
 

ピアノの島健さんとトキコさん

ピアノの島健さんとトキコさん


 
トキコさんは10年前、それまでシャンソンのアルバムを1枚しか作っていないことに気づいて、新しいシャンソンのアルバム制作に取り掛かった。ずっと一緒にやりたかったジャズピアニストの島健さんと(シャントゥーズ・トキコ1&2)。そして今日はその中から4曲!

「リベルタンゴは自由のタンゴという意味。そこに私の想い、ピアソラの情熱も託して詞を作りました。はたけやま裕さんのソロからお聞きください!」
  

はたけやま裕さんソロ

はたけやま裕さんソロ


 
静まりかえった会場に赤い光が降り注ぐ。はたけやま裕さんのパーカッションが、まるで生き物のように唸りだす。突き放すような冷たさと絡みつくような情熱が一瞬溶け合う。そんな熱い音の波に呑まれて客席の空気が熱を帯びる。リベルタンゴの誘うようなメロディと真紅の光の中、さっきまで笑っていたトキコさんの表情が急にぐっと妖しさと深みを増す。撮っていると引き込まれそうで、ドキドキしてくる。
 
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♪リベルタンゴ
♪忘却

続けてジャック・ブレルの「愛しかない時」。そしてピアフの「愛の讃歌」。
今度は明るい太陽の光に満たされるような清々しさ。最後にトキコさんが弾ける笑顔で、はずむようにあげた右手が、その喜びをレンズのこちら側にも伝えてくれた。
 
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♪愛しかない時
♪愛の讃歌

 
 
◆二部の最後は「百万本のバラ物語」
 
1968年、歌手になって初めて旅をしたのがソ連7都市、初めがバルト三国、最後がグルジア(現在のジョージア)。この旅がトキコさんにとって今に続く複線になっている。
「いまはソ連からそれぞれの国が独立して、百万本のバラにまつわる国々が全部、バラバラになりました・・・」
いまのは駄洒落!?という客席のどよめきと笑いに気づいたトキコさん。
「え・・・バラ・・・うわーーー!!(爆笑)」
 

3階席の奥、隅々まで満杯のNHKホール

3階席の奥、隅々まで満杯のNHKホール


 
「百万本のバラ」は、元々ラトビアの子守歌として生まれた楽曲が、画家ピロスマニの恋をモデルにロシア語に翻訳され、ソ連で大ヒット曲となった歌。子守歌の歌詞は「神様は命をお与えになったけれども、なぜ幸せまでお与えにはならなかったのですか」。ラトビアの悲しい歴史と重ねて感じられる歌だからこそ、その悲しみをそのままに、ラブソングに変えた翻訳は素晴らしいとトキコさんは言う。

「どんなに愛していても届かない。でも届かなくても愛を表現することは限りなく素晴らしいですね」

そのストーリーを感じてもらうため朗読と歌にアレンジし、200名を超す大合唱団と一緒に歌う壮大な「百万本のバラ物語」が、始まった。

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ダバヤ ダバヤ ダバヤ マリニャー
Davaja, davaja, davaja, Marina —
3階まで階段を駆け上がって客席のドアを開くとこの美しい景色。歌いだしはコーラス隊によるラトビア語の子守歌の一節。優しく悲しい異国の響きに、ラトビア語がわからないはずの私も、鳥肌がたち目頭が熱くなる。そしてトキコさん作詞、日本語の歌いだしへ。
「百万本のバラの花をーーー」大コーラス隊と一緒に歌うと、歌の世界の奥に広がるラトビアの風景が微かに見えてくる気がする。
 
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パーカッションと荘厳なコーラスの歌声がホールを満たし、その最後の音色は会場の拍手の渦の中へフェイドアウトしていく。
 
駐日ラトビア共和国大使ノルマンス・ペンケさんから花束の贈呈
 

歌い終わると、駐日ラトビア共和国大使ノルマンス・ペンケさんがバラの花束をもってきてくれた。ペンケさん「皆さんのラトビアの歌への愛を感じました。ありがとうございました。そしてこの素晴らしいコンサート、本当におめでとうございます」

トキコさんが退場しても鳴りやまない拍手の渦は、いつしかアンコールのリズムにまとまり、大きなうねりになった。トキコさんが再び登場すると会場の熱気はピークに達する。

「ではもう1つ、私を50年守ってくれた歌です。オリジナル通りにリエパーヤ交響楽団の皆さんに演奏して頂こうと思います・・・知床旅情!!」
 
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♪知床旅情
 
歌手生活30周年の頃、つまり20年前にトキコさんが乗った飛行機がハイジャックされる事件があった。その後に作ったアルバム「晴れ上がる空のように」。このコンサートの最後の最後に待っていたのは、この中の壮大な一曲。トキコさんの声が、少し涙声に変わる。

「本当に、1人ずつの人がちゃんと思いを達成して生きるということは、大変なことだなと感じた大きな出来事でしたので、その気持ちを込めて作った歌の1つです。
この果てしない宇宙の中に、小さな地球という星があって、ここに偶然のように私たちは命をもらって生きている。小さな命だけど、この逞しい大地を縦横無尽に味わって生きていきたいという意味を込めて作りました・・・蒼空(そうくう)!!」
 
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♪蒼空
 
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最後は、もう言葉はいらなかった。大地を揺るがすような熱い拍手が本当に、ずっとずっと続いた。スタンディングオベーションで立ち上がる人たちに埋もれそうになりながら必死で撮った写真の一枚一枚は、トキコさんの中の思い出に、いつか残ってくれるといいな。

「まだまだ歌いたい歌が一杯ある!!」終演後にトキコさんが言っていた。
その言葉を嬉しく聞きながら、素敵でヤンチャなトキコさんとその歌を、これからも見守っていく大勢の人達の一人に、私もなりたいと思いました。

50周年。本当に、おめでとうございます!!
 
全体記念写真2297_rt-t_R
 
 

写真と文:ヒダキトモコ

 



ヒダキトモコ
写真家。日本舞台写真家協会会員。
各種雑誌、CD/DVDジャケット等エンタテインメント全般、企業広告等を撮影。
趣味はバックパッカーの旅。
http://hidaki.weebly.com / twitter ID: hidachan_foto

 

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