ほろ酔いコンサート2015年東京よみうりホール [28歳のバースデー]2015年12月27日


 

ほろ酔いコンサート2015年 東京よみうりホール
[28歳のバースデー]
2015年12月27日


◆ほろ酔いコンサートの空気感
 
師走の有楽町、慌ただしく賑わう家電量販店を抜けてエレベータを上がるとそこは別世界。
並んだ大関の酒樽の前で、法被に身を包んだスタッフから振る舞われる日本酒を片手に大勢の人が開演前のほろ酔いタイムをゆっくりと楽しんでいた。
 
加藤登紀子ほろ酔いコンサート2016/よみうりホール
 
今年は11月~12月にアートサロン毎日で私、ヒダキトモコの撮りためた写真展「加藤登紀子50周年展・毎日新聞社おんなのしんぶん2周年展」が開かれた。今年の「ほろ酔いコンサート」のロビーでは、その写真の中からのダイジェスト写真展も開かせて頂いた。すぐお隣では、毎年恒例のペシャワール会をはじめとする募金のコーナー、そして鴨川自然王国からは今年もお米や味噌、レモンなどが山ほど売られている。そして会場には可愛らしい声で歌うトキコさんの若い頃の楽曲が流れている。
 
◆一部開演!
 
加藤登紀子ほろ酔いコンサート2016/よみうりホール
 
客席のライトが落ち、弾むようにバンドメンバーがステージの位置につくといよいよオープニング!楽曲「百歌百会」のワクワクするようなオープニングに合わせ、可愛らしい真っ赤なキルティングスカート姿でトキコさんが登場すると客席からは歓声が上がった。
 
加藤登紀子
 

♪百歌百会
♪酒がのみたい

 
加藤登紀子ほろ酔いコンサート
 
♪あなたに
 
年季の入ったよみうりホール、トキコさんはとても好きという。
「馬蹄型で、もう全員私の腕の中に入るような気がしていいなぁと思ってます!・・・あら、あなた俳優みたいな顔しているわね?みんなの顔をこうして見るのがとても好きなの!」
 
客席を歩きながら一人一人の顔を覗き込むトキコさんに、話しかけられた男性もモジモジしつつ嬉しそう。それにしても、通路ではない客席の中へもドンドン入って行ってしまうアーティストはトキコさんくらいじゃないだろうか!お客さん達は、膝が当たるほどに近いトキコさんにきっとドキドキしながら、その気さくな会話と至近距離での歌を思い切り楽しんでいるように見える。
 
「この時期は訃報が届くというジンクスがあって。去年は11月10日に高倉健さん。その5年前が同じ命日で森繁久彌さん。今年は野坂昭如さんがね。野坂さんより、私は大変若いのですが、妹と言って頂きました・・・」
と話しながらおもむろに野坂さんの歌った黒の舟歌を歌い始める。
 
加藤登紀子

 
♪黒の舟歌♪

 
「昔『壊された大地の上に』っていう本を書いたときに野坂さんが帯の所に書いてくれた言葉があるの。『加藤登紀子を見ていると、青空の下で焼け跡の上を、鼻歌を歌いながら歩いてくる可愛い少女に見える。そして僕はおなかが空くのだ』って(笑)」
 
◆色々な思い出に包まれて
 
色んな人を思い出しながら語るこの日のトキコさんは、空の上の人ばかり思い出すわね~!!と笑いながら、時折涙ぐんでいるようでもあった。
 
「さっき会場に流れていたのは、可愛い25歳頃までの歌です。告井さんも知らないくらいの可愛い頃!(笑)人生というのは、何がどう変わっていくのか自分ではわからないけど、色んなものを星のかけらのようにまき散らしながら生きるしかない、昔を取り戻すことはもうできないんですね」
 
でも当時は嫌で仕方ないと思っていたデビューの頃の歌を最近聴いてみたら、あまりの可愛らしさに(!)ビックリして、今日開演前に流すことにしたという(笑)
結婚して一時歌を辞めた時に、どんなに自分が歌を歌いたいのか痛感したトキコさんは、再び歌いだす決心をする。
 
「それからは自分の歌を、自分の人生の日記のように、私はこうして生きましたよっていうその一刻一刻を、時間の早い流れの中でしっかりと、自分を心に留めながら、生きていきたいと思って曲を書きだしたんです!」
その頃告井さんと一緒に音楽を作り始めて、いちばん思い出に残っているというアルバム「回帰線」から、久々の歌が飛び出した。『生まれた街』。
 
加藤登紀子
 

♪生まれた街♪
♪ひとり寝の子守歌♪
♪いく時代かがありまして♪
♪あなたの行く朝♪

 
トキコさんは歌いながら、突然ゴビ砂漠で星空を見上げた時のことや、カンボジアの難民キャンプで活動していた日本人フォト・ジャーナリストのことや、色々なことを思い出していく。
「人間が色々な大変な目にあって、国もない、明日もないかもしれない、というような時。そんな時でも子供たちは元気に走り回っている。そういう命の原点が大好きで、ずっと思いを寄せているんですよ」
そう話しながら震災の1週間後に作った歌を歌い始めた。
 
加藤登紀子
 

♪今どこにいますか♪

 
歌い終わりと同時にトキコさんの目が潤んだと思ったら少し泣いてしまったらしい。
笑ったような顔に手を当てながら(あ~だめだ~~~)ともらす涙声のトキコさんに会場からは、割れんばかりの暖かい拍手が降り注いだ。
 
一部の締めくくりは2015年11月18日に発売したばかりの新アルバム「百歌百会」の中から3曲。それぞれ、トキコさんと誰かとの深い関わりの中で生まれてきた暖かい、じんわりと強い力を与えてくれる楽曲ばかり。
 
1曲目は、「コージ」。
1988年、倉本聰さんが北海道の富良野に住み着き、歌志内の炭鉱跡のロマン座という劇場でずっと芝居をしていた頃、炭鉱前で開く野外コンサートのために作った楽曲。倉本さんから事前にトキコさんへ送られてきた長い原稿にトキコさんが曲を付けたもので、1人のアーティストがメジャーデビューして故郷に戻ってくるまでをほろ苦く、暖かく描いた物語。8分間と長い作品だが、全然そう感じないのは、まるで面白い小説をゴハンも忘れて読み続けてしまう感覚に似ている。
~コージ、どうして泣いたりするのさ みんなずっと、待っていたんだよ~
撮りながらこのフレーズで涙が浮かんだ。寂しく一人で故郷に戻ってきたコージを、土地のひとが再び受け入れる。人間は時に様々な顔を見せるけど、誰かのつまづきも、過去の様々も、何もかも許して最後は抱きしめてやれるような、やはり暖かいものだと信じたい。
 
2曲目は「今は恥ずかし夢のなごり」。1997年、高倉健さん70歳記念に当初アルバムを作る企画があり、健さんのためにトキコさんが書いた楽曲。企画は残念ながら実現しなかったが、昨年亡くなった健さんへの追悼の意味を込めて、トキコさんがレコーディングした一曲。人生が深まって行って、いつか気がつくとこんな風に、今迄の諸々を肯定できたらいいな、と思わせてくれる作品だ。
~貧しさも 悲しみも みな愛しくて 敗れた夢さえも 今は懐かし~
 
最後は、相田みつをさんの詞にトキコさんが曲をつけた「人間だもの」。
1990年に相田さんと出会ったトキコさんが感じた、彼の心の中に存在するウズウズ、キラキラした想いを、「声」に出来たらいいと思って作った一曲だそうです。
「出会った時は私より相当年上の、おじいさんだと思って見ていたのね(笑)!だけど60代で亡くなっている訳ですから、今の私より若いのよね・・・変なものだなー(笑)」
~あやまちだってあるよ おれだもの 一番わかっているようで 一番わからぬ この自分~
 
加藤登紀子
 

♪コージ♪
♪今は恥ずかし夢のなごり♪
♪人間だもの♪

 
「ちょっと長くなっちゃったね!ゆっくりしてくださいロビーで。そうだ自然王国の野菜も来ているのよ、レモンもきてるかも!!沢山とれたの、今年!!じゃ二部も楽しみにしていてください!」
ニッコリ笑うと「またね!」という風に袖に入っていった。
 
 
◆第二部 ~かっこいい別れの歌たち~
 
加藤登紀子
 
♪グッバイダンス♪
 
加藤登紀子
 
♪オペラの終幕♪
 
2部最初の2曲はかっこいい別れのラブソング。
セクシーで凛とした、強い被写体に魅せられたように、撮影しながらため息がでた。客席からも、熱い拍手と歓声が沸き上がる。そして歌い終わったトキコさんはトコトコと歩いてきて、客席をのぞき込む。
「・・・どう?!」
ちょっとドヤ顔のトキコさんに会場は打ち上げ花火のような笑いに包まれた。ほっとするような可愛らしさに、歌の中のカッコイイ女から、普段のトキコさんに戻ったような気がした。
 
加藤登紀子
 
この2曲が収録されているファシネイションは1991年、山中湖にこもってレコーディングした全曲書下ろしのアルバムだ。一曲目のグッバイダンスに続き、ロックテイストのものや、いい意味でドライに突き放したようなカッコイイ女が沢山描かれている。アルバムのテーマは別れ。
「私のお別れソングは沢山あるんだけど、それにはモットーがあるのよ!」
 
加藤登紀子
 
★さよならはカッコよく
★さよならは自分から:「相手に言わせないの!寂しいから(笑)」
★別れた後も嫌いにならない:「これが人生のコツですよ。嫌いになったら苦しいばっかり。後味がいい方がいいですよ、人生はね!」
 
「オリジナルの歌では、この歌はもしかするとこのまま消えて行くのかなっていう歌も沢山ありますね。それでも何年振りかに引っ張り出してみると、ほっといてごめんね、っていう感じ。歌には一つの命があって、私の意識とは関係なく、ずっと繋がって行く。歌は、人とはまた別の生命を持っている気がします」
 
加藤登紀子
 

♪今日は帰れない♪
♪花はどこへ行った♪
♪愛の讃歌♪
♪私は後悔しない♪

 
「花はどこへ行った」は60年代にヒットした反戦の歌。元々はロシアの作家ショーロフの本の中にあった、コーカサス地方の古い詞に、ピート・シガーがメロディをつけて歌い始めたもの。その後、ディートリヒはじめ色々なアーティストがカバー。トキコさんは中でもディートリヒの歌ったバージョンがとても好きで、去年京都で行った「エディット・ピアフ物語」の最後にこの歌を歌った。
 
「来年は一大決心。東京で、エディット・ピアフの物語をやります!ピアフとディートリヒ2人を私が1人で演じるステージを作ろうと思っています!この二人はとても仲が良くて、最後にピアフをみとったのはディートリヒだったんですよ」
 
加藤登紀子
 
ディートリヒと同じ誕生日というトキコさん。
「そうそう、告井さんがなんとピアフと同じ誕生日なんです!」
へぇ~!という感じで会場がどよめいている中、くるっと告井さんの方へ笑顔を向ける。
「最後は土、かけてあげるね!!(会場、笑いの渦)」
穏やかな笑顔のまま一瞬、エ?という顔の告井さんに向かって
トキコさん:「ディートリヒはピアフより15歳も上なのよ!!」
告井さん:「はい」
トキコさん:「でもピアフの後まで生きたわけ。でもまあ・・・私の方が先行くから大丈夫よ!」
告井さん:「・・・それはわかりません(笑)」
トキコさんはいたずらっ子のように「イヒヒ!」という笑顔を見せながら、会場に広がる笑いの中、告井さんをそのままに、壮大な宇宙の歌へとコンサートは続いていく。
 
加藤登紀子
 
♪愛はあなたの胸に♪
 
スケールの大きなこの歌の世界に漂いながらホール中が暖かい空気に包まれた。
トキコさんに続き、メンバーが退場すると同時に拍手はアンコールのリズムになり、段々とそれが強くなっていくように聞こえた。
 
◆終わらないアンコール!!
 
加藤登紀子
 

♪百万本のバラ♪
♪富士山だ♪

 
◆サプライズ大成功
 
富士山だ、が終わるか終わらないかの時、突然告井さんがハッピバースデーを歌いだした。
トキコさんは全く予定していなかったようで、本当にびっくりした顔で笑っている。
Happy birthday dear Tokiko
Happy birthday to you!!
 
加藤登紀子
 
「・・・ありがとう!!」
口笛や歓声があがる中、フォークを右手にイチゴをパクリ!
そしてそのまま、日本酒の盃へと手を伸ばすとまた会場は、笑いの渦に包まれていく。
「ケーキとお酒で!ありがとう!乾杯!」
そういって嬉しそうな笑顔で盃を掲げ、ゴクゴクと美味しそうに一気に飲み干した。
 
加藤登紀子
 
ふと見ると告井さんがギターを準備していて、トキコさんと目が合った。
「告井さんいま何をやろうとして構えてるの??・・・ウワーーそうなんだ!
わかった、みんな、告井さんがやりたいんだって!!行きます、加藤登紀子のテーマソング!誕生日を祝って!Two, three, four!」
 
加藤登紀子
 
♪Power to the People♪
 
会場も一緒に!とあおったトキコさんに、遠慮がちにPower to the People!と返す客席。
「可愛すぎる!!可愛すぎるよ!!」とあおり続けるトキコさん。そのうちカウントを始めた。
「1つ、2つ、3つ・・・7つ、8つ!!これから、8つ過ぎたら私は二十歳になります!
そうしたら成人式をしたいと思いますので、宜しくお願いします!!Power to the people right on!」
 
◆トキコさん流、年齢の数え方!
 
それは、50歳を過ぎると、人は一つずつ年をマイナスしていくというもの。
72歳になるトキコさんは、50-22=28という計算だ!
「今日で28歳です、結婚した年です!これからは独身だった頃に戻るんだよー!(笑)そしてあと8年をかけて、二十歳になります!!楽しみたいです、この20代を。みなさん、この8年間を、最も、熱く燃えましょう!!」
 
加藤登紀子
 
考え方ひとつで楽しくなる!ときに、重ねてきた日々を振り返り、愛しみながら、新しい明日に向かってどんどん走って行ってしまうトキコさんの背中を我々は、息を弾ませ、走って追いかけずにはいられない気持ちになるのは何故だろう。
 
「今日ここにきたのが運のつきよ、もうこれから10年は来なくちゃね!(笑)来年はピアフのコンサート、絶対応援してくださいね!!」
 
そしてリエパーヤのオーケストラがサプライズでアンコールの後に勝手に演奏を始め、嬉しい追加アンコールを求めてくれたという知床旅情。
 
加藤登紀子
 
♪知床旅情♪
 
そしてラストは「花は咲く」。この歌は震災のあとずっとかかっていた歌。でも最近はぐっと聞く機会も減ってしまったこの歌を、最後にみんなと歌いたいとトキコさんは言った。
「・・・来年、いい年になりますように。雪が降っても、嵐が来ても、あなたといるということが何よりうれしいです。歌います。歌い続けます」
 
加藤登紀子
 
♪花は咲く♪
 
◆まだ終われない!!逆サプライズ!
 
会場全体がひとつの大きな命になったように拍手がずっと鳴りやまなかった。
アンコールのラストは、感動的で良かった・・・と思った瞬間、トキコさんがマイクを握りなおした。そして眩しいほどの笑顔で言った一言に、会場全体が笑いの渦に。
「・・・なんか、これで終わってはいけないような気がする!!(笑)」
 
カメラを下して私も笑いながら後ろを振り向くと、事務所のスタッフさんも予想外の展開に大笑いしていた!予定調和で絶対に終わらないトキコさんは身内をもびっくりさせ続ける!!もちろん、ハッピーサプライズで!!
 
「じゃあ、愛を耕すものたちよ!最後に歌ってもいいですか!」
イイゾーとばかりに会場の爆笑と拍手が一層盛り上がる中、クルっときびすを返して静かに一升瓶に向かっていくトキコさん。
 
加藤登紀子
 
「・・・ちょっと一杯飲んでから行こうか☆」
それを聞いてまた再び笑いの波が会場をヒタヒタと広がっていく。
 
「座りたい人は座っていいよ!!
ありがとうございました・・・
本当にありがとうございました!!」
 
何度も何度もありがとうと言うトキコさんに、じんわりと心が震えたのは私だけではなかっただろう。
 
加藤登紀子
 
♪愛を耕すものたちよ♪
 
加藤登紀子
 
◆51年目のスタートダッシュ
 
50周年イヤーが終わっていく。去年のほろ酔いから始まり、大きなものだけでも、50周年記念パーティ、50周年記念アルバム、50周年記念DVD、ラトビアからリエパーヤ交響楽団を呼んでNHKホールでの記念コンサート、ラトビアでのコンサート、新アルバム「百歌百会」、50周年記念写真展、そして2015年のほろ酔いコンサート。いつもトップギアで走り続けるトキコさんが更にワンギアあげて走り抜けたような感じもする2015年。
 
加藤登紀子
 
会場でもトキコさんは走っていた
 
この日のコンサートも満杯のお客様と一緒に、いっぱい呑んで、一杯笑って、歌って、泣いて、あっという間に時間が過ぎた。そして、トキコさんはもう二十歳のお誕生日目指して走り出してしまった!!そんなトキコさんの背中を見失わないように、追いかけて行くのは本当に大変!!ということで、これからは心身を一層鍛えながら、一緒に走って行けるように頑張りたいです。二十歳までの、これからの8年が本当に楽しみです!!
 

写真と文:ヒダキトモコ

 



ヒダキトモコ
写真家。日本舞台写真家協会会員。
各種雑誌、CD/DVDジャケット等エンタテインメント全般、企業広告等を撮影。
趣味はバックパッカーの旅。
http://hidaki.weebly.com / twitter ID: hidachan_foto

 
 
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