ほろ酔いコンサート2016
~関内ホールで立ち上がろう~
(2016年12月7日 於:関内ホール)


TOKIKO KATO ほろ酔いコンサート

師走になった。2016年のほろ酔いコンサートは12月3日に沖縄で幕を開け、続いて関内、広島、佐賀、京都、名古屋、大阪、そして最後は27~29日に東京のよみうりホール3日間。その2幕目ともいえる関内ホールのほろ酔いコンサートをリハーサルから撮影した。

「サウンドがみんなもう、ほぼ出来上がっているから、今日は少し楽だね!!」
リハーサル中、珍しくそんなことを言うトキコさんは黒いタートルネックに真っ赤なニットのミニスカート、その下に黒のスパッツ、黒ブーツ。それがとっても似合っていて可愛らしく、嬉しそうに笑っている。本番前には、毎回とても丁寧なリハーサルをするトキコさんだが、この日は特別にみんなの音が出来上がっていたようで、いつも以上に笑顔だった。

TOKIKO KATO ほろ酔いコンサート2016@横浜関内ホール

開演間近になるとホール入口には入場を待つ人が溢れ、入口上がった踊り場には「大関」の大樽が並ぶ。「ほろ酔いコンサート」を知らない人のために説明すると、舞台上ではトキコさんが日本酒を飲みながら歌うだけでなく、客席に入るまえにお客さんたちにも振舞酒が出される。ロビーで頂く1杯の大関をぐいっと飲み干し、客席に入れば既に軽くほろ酔い気分。こんなコンサートはきっと他にはないだろう。年の瀬に、トキコさんが何十年も続けている粋な、伝統のコンサートなのである。

そして開演。スタイリッシュな黒い衣装に身を包んだバンドメンバーが、勢いよく入場すると会場から拍手が。明るいアップテンポのリズムが鳴り響き、トキコさんが笑顔で溌剌と入場。客席は一気に熱を帯びる。そのまま3曲一気に歌い上げるうち、早くも2曲目で前の方のお客さんが立ち上がった。例年、終わりの方に歌う「百万本のバラ」を、今日は初めの方で歌ったトキコさん。拍手がやっと鳴りやんで開口一番、トキコさんがにっこりと微笑んで「今日は切り札からどんどん出していくのよ!」というと、客席は思わず笑いに包まれた。
トキコさんのコンサートに来るのは初めて、というお客さんが意外と多かった関内。
トキコさんも驚きつつ嬉しそうで「今回はね、百がキーワードなの。一期一会じゃ、なんか寂しいから、その百倍にしようってね!」

TOKIKO KATO ほろ酔いコンサート2016@横浜関内ホール

そして来年百歳を迎える歌「琵琶湖周航の唄」が始まると、トキコさんは客席に降りた。
戦後多くの歌手がカバーしたこの歌。中でも1971年(昭和46年)にトキコさんがカバーしたレコードは70万枚の大ヒットになった一曲。

ところで、私はトキコさんが客席に降りて、お客さんとかわす会話がいつも楽しみだ。
通路だけでなく、客席のレーンの中までドンドン入っていくこともあるトキコさん。
その日どう動くかあまり予想もつかないのだけど、歩いてくるトキコさんを前から撮影したり、トキコさんに覗き込まれて顔を赤くしている嬉しそうなおじさんを撮ってみたりする。するとなんだかとても、暖かい気持ちになる。
「1971年に東京でほろ酔いコンサートが始まったのよ。27歳だった」
おお、とどよめく会場。
「でも今年、12月27日の誕生日に、私は27歳になるんです!」
50mプールを折り返して戻ってくる計算方法で、どんどん身軽に、娘に戻っていくトキコさんなのだ。初めて聞く人は一瞬とまどっても、すぐに理解して笑っている。
私はまだ、ターンまで随分あるなぁと思いながら、私も50を過ぎたら、その計算方式を借りようと内心決めている。どんどん身軽になっていく人生、素敵じゃないか。

更に3曲、懐かしい歌が続く。3曲目は高倉健さんと夫婦役で共演した映画「居酒屋兆治」の歌、「時代遅れの酒場」。
その後、健さんに歌ってもらおうと作った歌は結局レコーディングされぬまま健さんは天国へいってしまったが、健さんの代わりに歌うトキコさんに、きっと天国から微笑んでいてくれるような気がする。私も大好きな、暖かい、切ない、人生の歌。
「今は恥ずかし夢のなごり」を歌ってくれた。こんな思いで、自分の人生を肯定できたらいいな。

そして、トキコさんが女子高生だった頃からトキコさんを見守っていた永六輔さんが残してくれた歌詞。それにトキコさんが歌を付けた一曲「ともだち あなた 戦う心」。

〜 寂しさに耐えられる 悲しみにも耐えてみよう 〜
〜 苦しさに耐えてみた 耐えてみたのだ 〜

一つ一つの歌に、大切な人を想って歌っているトキコさんの姿があった。
こうして思いを込めて歌ってもらえたなら、天国から関内ホールを見下ろしても、自分だったらきっと嬉しくて、またトキコさんの想いが愛しくて、たまらないだろうな。
そしてもう一曲、命のつながりを感じさせてくれる新曲「大きな樹の物語」を心いっぱいに感じたまま、あっという間に一部が終わってしまった。

TOKIKO KATO ほろ酔いコンサート2016@横浜関内ホール

後半はリズムの激しいダンサブルなナンバーから!
通路からカメラを構えてファインダーを覗いていると、お客さんたちがまた立ち上がるのが見えた!私も慌てて立ち上がっての撮影に切り替える。アンコールではお客様が立ち上がることの多いトキコさんのコンサート。でもこの日は序盤から何度も、スタンディング状態に!ほろ酔いツアーは始まったばかりだというのに、まるで今日が千秋楽みたいな気持ちになる。

やはり、何度も人が立ちあがるたくなるライブって素晴らしい。
音楽と震える空気に、身体が反応し、立ち上がって手拍子をうち、一緒に揺れたくなる。
椅子に座ったまま揺れている人も、車いすから笑顔で拍手をしている人も沢山見えた。
そんな素直な反応が客席に広がっていく様子を見ながら、私は胸が熱くなっていた。

TOKIKO KATO ほろ酔いコンサート@横浜関内ホール

そしてあっという間に後半最後の曲となり、先に出て行ったトキコさんに続きバンドメンバーが笑顔で出て行っても尚、拍手は途切れることがない。
あんまり長いと手が痛くなるだろうなぁと思うと同時に丁度いいタイミングで戻ってくるメンバーたち!
また客席が立ち上がり、カメラを下ろして後ろまで見渡すと、今度は長細い関内ホールの客席の、後ろのうしろまで、立ち上がっていくではないか。どんどんその波が広がっていく。

TOKIKO KATO ほろ酔いコンサート@横浜関内ホール

人生は、捨てたもんじゃない。
「生きているってこういう(すてきな)こと」
そんな瞬間をみんなと共に感じたくて、写真を撮っている気がする。
そのなんともいえない、混沌とした熱い生命のエネルギーを、客席が総立ちになろうとするこの瞬間、会場全体からマグマのうねりのように感じることが出来た。その中心にトキコさんがいる。

TOKIKO KATO ほろ酔いコンサート2016@横浜関内ホール

「ほろ酔いコンサート」は、単にトキコさんとお客さんがお酒を飲んで、ほろ酔いでする楽しく珍しいコンサート、というだけではない。あっという間の数時間に、トキコさんが今までの人生を通じて溜めてきた、濃縮されたパワーのエキスが、ポタ、ポタ、とお客さんの心を潤していく。真っ赤な衣装に身を包んだ可愛いトキコさんは、面白い話や色っぽい話で大笑いしたかと思えば、ある歌では、想いの純度が高まりすぎて、ぽろりと涙がこぼれたりする。一方お客さんは、明るくシンプルな歌でみんなで踊ったかと思えば、人生や死を深く静かに抱きしめるような歌で、優しく大らかに肯定されたような気持ちになったりするのではないだろうか。人生そのものの、大事なエネルギーが詰まっているのが「ほろ酔いコンサート」で、ステージに置かれた一升瓶の大関は、そのスパイスのようにも思える。

トキコさん「そういえば、なくなっちゃうんだって、関内ホール」
慌てたスタッフが袖から大声でトキコさんに叫ぶ。
スタッフ「トキコさん!改装!改装です!」
トキコさん「え?改装??・・・改装だって!!(笑)」

一瞬、無くなることにされちゃった関内ホール。私も客席の楽しそうな笑いの渦と共に笑いながら、ほっと胸をなでおろす。

「途切れることなく、また出会いましょう。本当にありがとうね!」

TOKIKO KATO ほろ酔いコンサート2016@横浜関内ホール

そしてトキコさんの旅は続く。日々あたらしい、鮮度のかたまりのようなトキコさん。これから毎日、どう変化していくのだろう?
27日には、有楽町のよみうりホールで、今年の全国ほろ酔いコンサートの旅から戻ったトキコさんを待つことが、私はいまからとても、楽しみなのです。

写真と文:ヒダキトモコ

 



ヒダキトモコ
写真家。日本舞台写真家協会会員。
各種雑誌、CD/DVDジャケット等エンタテインメント全般、企業広告等を撮影。
趣味はバックパッカーの旅。
http://hidaki.weebly.com / twitter ID: hidachan_foto

 

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