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  • 「1968年」 若者も元気をもらう!
    東急Bunkamuraオーチャードホール



    みーん、みん、みん、みん、みーん…

    街路樹に少し気の早いセミが鳴き始めるころ、今年もオーチャードの季節がやってきた。

    「若い人にも『1968年』を聞いて欲しいのよ。お友達をたくさん連れていらっしゃい」

    そう登紀子さんに言われて、女子大生からOLさん、サラリーマンからIT起業家まで20代、30代の今どきの若者を引き連れてやってきた。

    「オーチャード、でっけー!」とはしゃぐ若者たち、登紀子さんの名前や歌は知っていても、コンサートに来るのははじめてとのこと。

    5月24日に開催された府中の「Begin again」もよかったけれど、さあ、今回はどんなコンサートになるのだろう。第一部のテーマが「大地といのち」、そして第二部が「私の68年物語」。なるほど、会場には68年に血気盛んな学生時代を過ごしたであろう元気なおじさま、おばさまでぎっしりだ。

    会場の雰囲気にのまれてしまったのか、席に着くなり、神妙な顔をしておとなしく座っている私の友人たちは、ひとりとして68年にはまだ産まれていない。果たして、登紀子さんのメッセージは、この若者たちの心にも届くのだろうか。


    ●第一部 大地といのち



    さあ、幕が開けた。ドレスに包まれた登紀子さんが登場すると、おじさんも若者も思わず身を乗り出す。

    「Rising」「MAMA」「君が生まれたあの日」「檸檬 Lemon」。

    産まれてから大人になり、恋をして子供が産まれ、父となり母となり…とまるで誰かの伝記を読んでいるかのように、ひとつの物語が紡がれていく。

    そんな命のバトンについて登紀子さんは語る。

    「『ひとり寝の子守唄』が私の出発点でした。それまではまだ本当の意味で自分の人生をはじめてなかったんですね。そんな私も来年で歌手生活45年。住んでいるマンションと一緒の年月なんですよ(笑)。そのマンションが建ったころ、まだ赤ん坊だった人がいつのまにか、いいおっさん…いや、大人になっていたりして、エレベーターに乗っていたりしてね。人はちゃんと大地に根を張り、生きていく。子供を産んで、その子供が大人になって、また子供が産まれて…そういう、じゅんぐりじゅんぐり生きていくということが、ただただ、すごいものだなと思います」

    ●第二部 私の68物語

    さあ、いよいよおじさま、おばさまにとっては懐かしの、若者にとっては未知の1968年物語のはじまり。

    エディット・ピアフの「愛の讃歌」から、パリ市民に愛され続ける「さくらんぼの実る頃」、登紀子さんが夫・藤本さんに教えてもらった思い出の「知床旅情」。1968年につながる歌をどれも情緒豊かに歌う登紀子さん。年末のほろ酔いコンサートは日本酒が配られるけれど、ここではなんだかワインが飲みたくなる。ぜひ来年は、どこかのワイン蔵がスポンサーになって、樽を会場に持ってきてくれたらいいんだけど。ああ、ワイン飲みたい。

    そんな妄想をしていると、府中でも聞いたあの「1968年」のイントロが流れてハッとした。まだどのアルバムにも収録されていないけれど、登紀子さんの気持ちがいっぱい詰まったこの曲が一番、若い友人たちの心に響いたようだ。

    1968年、世界を変えようとした若者は傷つき敗れたり…けれども、その想いは現代とつながっている。また新たな革命を起こそう。でも、その革命は1968年とは違う。環境、生活スタイル、親子、いのち。登紀子さんは、ひとりひとりの心の革命を呼びかけているように思う。

    しっとりとした第二部とは打って変わって、アンコールはなんともエネルギッシュ。これから野外ロックフェス?と思われるようなノリノリのステージに、ぞろぞろと立ち上がって手拍子を打つ熟年と中年と若者たち。登紀子さんの言葉を借りれば、「ミルフィーユのように年月が積み重なった」人々が一緒になって、手をたたいている。

    ミルフィーユのようなコンサート。1968年という長い帯に、老若男女、みんなでグルグルと巻かれてひとつになる。今年のオーチャードはそんな不思議なコンサートだった。




    ●若者も元気になる! ---登紀子さんのコンサートを聞いて---

    せっかくなので、コンサート終了後、20代、30代の私の友人たちに感想を聞いてみた。お気に入りの曲は、やはり映画「紅の豚」に登場する「時には昔の話を」「さくらんぼの実る頃」だけど、「1968年」「君が生まれたあの日」「Seeds in the Fields」が印象に残ったらしい。若者が多い野外コンサートに出演するときは、「この3曲も入れて!」と登紀子さんにおねだりしてみます。

    ■D子さん (IT企業勤務)20代女性

    コンサートに来たのははじめてだけど、今日はすっごい感動したよー。もう、なんていうか、女なんだけどりりしい! そんな登紀子さんのかっこいい強さが同じ女としては好きですね。「1968年」はビビッときたけど、「Seeds in the Fields」もよかった。

    ■まよちゃん(旅行代理店勤務)30代女性

    実は、1969年のほうが私にはインパクトのある年なんだよね。生まれてはないけれど、ウッドストックとかジミヘンとかチャップリンとか。でも登紀子さんが歌う1968年って何があったんだろう? って興味を持ったよ。帰ってから調べてみようかな。

    ■O君(起業家)20代

    いろんな人のコンサートを聞きにいくけれど、登紀子さんのコンサートは、一体感があって、客席にいてもあったかい気持ちになれるんだよね。小さい頃から、「知床旅情」とかおばあちゃんに聞かされていてなじみもあるんだ。自分的に好きな曲は「百万本のバラ」と映画「紅の豚」で歌われていた曲が好き。

    ■Yちゃん(事務)20代女性

    登紀子さんのドレスがどれもきれいだった! ライトで黄色から白になったり演出がおもしろかったかな。シャンソンもよかったけれど、アンコールの曲でも元気をもらった気がする。

    ■Iさん(女子大生)20代

    母くらいのお歳なのに、休みなしで歌っているのがすごい。ジャニーズのコンサートにもよく行くんですけど、負けないくらい登紀子さんがパワフルでびっくりでした〜。きっと登紀子さんが長く生きてきた分、感情表現とか豊かなんだろうな。コンサートを聴いて、自分もがんばろうと思えた。っていうか、悩むのも悪くないって言われている気がしました。よかったのは「Seeds in the Fields」と、「1968年」。当時の状況は生まれていないけれど、歌とギターで状況が分る気がしました。

    ■山口さん(総務)30代男性

    実はオーチャードコンサートに来たのは2回目。演出がよかったなー。例えば? 登紀子さんの白いドレスがライトでいろんな色に見えるのがおもしろかったのとか、テンポが違う色んな曲を歌っているのに進行がスムーズだったり。「知床旅情」とか「さくらんぼの実る頃」などののんびりした歌が好き。MCで、実際に登紀子さんがエディット・ピアフのお墓を訪ねたりしたエピソードとか心に残りました。

    ■Kさん(編集)20代男性

    「ひとり寝の子守唄」が好きで昔からファンでした! とはいえコンサートに来たのは初めてで感激。今日もCDを聞いて予習してから来ました。今日、登紀子さんの歌では始めて聞いたんだけど「MAMA」は、ウルッと来てしまった。きっと登紀子さんもお母さんのことを思いながら歌っていたんだろうな。母親のことを大事にしている気持ちが伝わってきました。「夜の通行人に捧ぐ」これはいなくなった恋人への切ないメッセージ。心にイメージが沸いてきてまたウルッと…。あと、未収録って言っていたけど、「君が生まれたあの日」がマイ・フェイバリット No1!! 「運のいいやつになれ 太陽を味方にして」という詞がいい。なんか幸せな気持ちにさせるんですよね。

    ■Fさん(営業)20代女性

    登紀子さんってたしか60代だと思うんだけど、舞台はすっごくパワフルだった! 歌よりもドラマや映画「紅の豚」で登紀子さんを知ったのが最初だったかな。今日は元気をもらった。「Hey Jude」はよく聞いている歌なんだけど、登紀子さんが歌うと「今のいろんな状況を自分で変えて行こう!」という気持ちになる。1968年にはまだ生まれてないけれど、曲はインパクトがあった。自分自身、「しっかりやっていこう」と思えたコンサートでした。





白石あづさ

「THE EIKEN TIMES」に加藤登紀子インタビュー掲載中!!


白石あづさ

10月28日生まれ。東京在住。
生誕1万日目に思い立って勤め先を辞め、

約3年の世界放浪の旅へと旅立つ。
その間、訪ねた国、地域は約100にのぼる。
帰国後、フリーライターに。
ライフスタイル誌や人物インタビューなどを中心に活動。
2008年5月30日に小学館より「世界のへんなおじさん」を出版。

<blog>http://www.hennaojisan.com/