ドキュメントTokiko
02.
村上さんがそう言った瞬間、平野さんがもう一度入ってきて、平野さんのスピード感のある楽しいおしゃべりはもうノンストップ!

平野さん「あのね昔ね、私が和田誠っていうイラストレーターの人と結婚したのね。そこへね、小泉今日子と渡辺えりさんが遊びに来て、なんでレミさんがいるの!っていうから、私和田さんと結婚してるのよって言ったのよ!二人とも、私が結婚したことを知らなかったのよ!」
渡辺さん「ステージでいつも一緒だったのよね」
平野さん「ね!でも知らなかったのよね!結婚してること!」
だんだんと混乱が深まる様相にさすがのトキコさんも危機感を抱いたのか、
トキコさん「もう、どんどん・・・出てきていただいたらどうでしょうね」
村上さん「では続けます。デヴィ・スカルノさんと、大江裕さん!」
それでも平野さんのお話が更に続きそうになるカオスにピリオドを打つように、一歩前に出た池畑慎之介さんが笑いながらカットイン。

池畑さん「ちょっと!近所のおばさんのおしゃべりじゃないんだから!!いま時間ないんだから!!本当にもう。あとでやってくれよ!(笑)」
ステージ上には人がどんどん溜まっていき、このカオス状態の中でのドタバタに、またその中にあっても粛々と進めていこうとするベテラン村上さんの采配に、色々なものがごったまぜになったまま、会場全体は楽しそうな笑いに包まれていく。
トキコさんの60周年のパーティだもの。そしてトキコさんの古いお友達ばかりだもの。これくらいの混乱は逆に、出席してくれたほろ酔い気分のお客さんたちにとっても、おそらく気持ちよく笑えるいい時間なのである。
司会の村上さんに、「クミコさん、どうぞ!」と前に呼び出されたクミコさんがお祝いの挨拶をしようとするが、ステージ上は丁度バタバタと落ち着かない。
「本当におめでとうございます!」
というのが精一杯のクミコさんが気の毒のようでもあり、楽しそうでもあり。

続く渡辺えりさんは、笑顔でマイクを握る。
「おめでとうございます!尊敬しています。トキコさんは本当にポジティブで。いまもウクライナ等、大変なことがありますが、あきらめちゃいけない、っていうことをいつも歌にして歌って下さるトキコさん。本当におめでとうございます!!」
デヴィ夫人「本当におめでとうございます。加藤登紀子さんの歌にはいつも感動を与えられています」
そういうデヴィ夫人にトキコさんが笑って近づく。

トキコさん「初めてお会いしたのは美女対談っていう番組で、そのときに「あなたはどうして、そんな下がり目に見える化粧をしているの?」っていうのがあなたとの最初の会話でした」
デヴィ夫人「失礼なことを言いましたよね、本当に申し訳ないです。私が申しましたのは、『なんでアイラインをそんなに下げていらっしゃるんですか?』ってね・・・」

会場が更なる笑いに包まれる中、今度はトキコさんが平然と大江さんを紹介する。
トキコさん「お隣は大江裕さんです」
大江さん「大江裕でございます。僕のような若輩者を60周年記念に呼んで頂きまして、また最近ではYouTubeで『一人寝の子守唄』を一緒に歌わせて頂いたり、本当に優しく包んで下さる先輩でございます。これからも宜しくお願い致します。本当におめでとうございます!!」
ステージ上は満杯となっていき、更に手嶌葵さんとゴスペラーズの皆さんが呼ばれて上がった。「壇上に上がり切れるかどうか・・・??」
そんな村上さんの心配そうな一言がマイクから小さく聞こえた。

手嶌さん「いつもぎゅっと抱きしめてくださるトキコさんが本当に大好きです。60周年おめでとうございます」

南さん「今朝きました、田舎から」
トキコさん「なんか・・・おじいさんのフリしてない?(笑)」
南さん「いやいや、昨日身長と体重の検査をしたら、身長が3センチ低くなってた。75歳なんですけど、そんなもんですね。・・・そんなことは別に良いのですが」

トキコさん「私とは長い仲ですね!」
南さん「トキコさんはいつも時代と向き合っている。いまっていう、その時にメッセージソング、どの時代が悪いとか、絶対言わない。トキコさんは愛を歌うんですよ。それがすごくメッセージとして響きます。いつもそう思っておりました。おめでとうございます!!」
そしていよいよ鏡開き。湯川さんとコシノさんも壇上に上がると、村上さんがステージ上の皆さんに声をかける。
村上さん「僕がせーのといったら、皆さんヨイショ、でお願いします!
・・・せーの!!!」
すると同時にトキコさんも「せーの!!!」
全員「よいしょ!」


村上さん「ではこのまま祝杯の御発声を南こうせつさんに!」
すると南さんは盃をあげ、笑顔でトキコさんへのお祝いと乾杯の掛け声をかけた。
南さん「それでは盃を挙げて頂いて加藤登紀子さんの60周年をお祝いして、更にこれから素晴らしい歌をいっぱいお届けして、我々もそれについていきたいと思います!今日おときさんの御縁で大勢ここにいらっしゃった皆様の、これからの希望も祈念いたしまして・・・加藤登紀子さん60周年。カンパーイ!」

ヒダキトモコ
写真家。日本写真家協会(JPS)、日本舞台写真家協会(JSPS) 会員
東京都出身、米国ボストンで幼少期を過ごす。専門はポートレートとステージフォト。音楽を中心とした各種雑誌、各種ステージ、CDジャケット、アーティスト写真等に加え、企業の撮影も多数担当。趣味は語学とトレッキング。
Instagram : tomokohidaki_2 / Twitter ID : hidachan_foto