ドキュメントTokiko
2025
09.
09.
02
ドキュメントTOKIKO - Restart 『加藤登紀子60周年記念コンサート』<第二部>①

第二部は『運命の扉』から始まる。昨年お邪魔したほろ酔いコンサートでもその荘厳さに驚いたが、今回はそこにストリングスが加わったこともありその重厚感に圧倒される。

一曲を受け取るために使っている器官が耳だけではない、そんな感覚になった。
そして畳み掛けるようにここでゲストが呼び込まれる。ピアニストの江﨑文武さんだ。
『時には昔の話を』の歌詞に感動した江﨑さんが『きみはもうひとりじゃない』の作詞を登紀子さんにお願いしたことがご縁の始まりだったとのことだ。
『きみはもうひとりじゃない』は当時17歳だったHana Hopeさんが歌うために作られたということもあり、次の世代、そしてまた次の世代へと繋がれていくような歌詞にしたかったと登紀子さんが話す。

今日は江﨑さんのピアノと登紀子さんの歌で『きみはもうひとりじゃない』が奏でられる。
江﨑さんはピアノを演奏しながら時折登紀子さんの方に視線を移し息遣いを合わせる。その光景が美しかった。
江﨑さんはピアノを演奏しながら時折登紀子さんの方に視線を移し息遣いを合わせる。その光景が美しかった。

「ありがとう ごめんなさい 言えないきみが好きさ 本当の気持ち 言えるまでは 黙ってていいよ」という歌詞は江﨑さんから曲が届いた日の新聞に載っていた「ありがとう、ごめんなさいが言える子どもに育てたい」というコピーから浮かんだものだったらしい。

子供の頃にこの歌詞に出会いたかったと膝を打ちそうになる。黙ることも、言葉なのだ。
続けて江﨑さんのピアノで『80億の祈り』が歌われる。
そこに静かにYaeさんも合流し、ステージの空気がまた変化する。一滴の水から波紋が広がるような、そんな気配だ。
Yaeさんの歌声が重なり舞うたびに、なんだか森の中にいるような心地になった。
ステージの上にいるのに枝を踏む音を立てないように森を進むそんな雰囲気が神秘的ですっかり虜になってしまった。

『80億の祈り』はYaeさんが作詞作曲を手がけた。
江﨑さんをお送りした後、登紀子さんはYaeさんと手を繋ぎながら『80億の祈り』が生まれた時のことを振り返っていた。
江﨑さんをお送りした後、登紀子さんはYaeさんと手を繋ぎながら『80億の祈り』が生まれた時のことを振り返っていた。

Yaeさんが『いのちの灯』を歌い、登紀子さんが『雨音』の朗読をする。
雨の森のように静謐でいて、大地のように熱い。そんな二曲に会場が耳を澄ませる。
雨の森のように静謐でいて、大地のように熱い。そんな二曲に会場が耳を澄ませる。

『遠い祖国』『IMAGINE』『川は流れる』は会場の一番奥の通路に静かに移動して撮影した。
ここからだとお客さんの後ろ姿や、音が広がる空間をじっくりと感じられる。
そしてこの時、あることに気付いて衝撃を受けた。
登紀子さんのコンサートは最前列でも一番後ろの席でも、届くパワーや感動が全くと言っていいほど変わらないのだ。

この凄さは会場内を移動するカメラマンだからこそ痛感する。
演劇やライブでも「席が後ろだったからよく分からなかった、楽しくなかった」という声を聞くことがままあるが、登紀子さんのコンサートにはそれがない。
この広いNHKホールに感動を行き渡らせるその力は並大抵のものではない。
そこに至るまでの歴史や歩みを感じながらこの3曲を会場の空気と共に記憶した。
演劇やライブでも「席が後ろだったからよく分からなかった、楽しくなかった」という声を聞くことがままあるが、登紀子さんのコンサートにはそれがない。
この広いNHKホールに感動を行き渡らせるその力は並大抵のものではない。
そこに至るまでの歴史や歩みを感じながらこの3曲を会場の空気と共に記憶した。

アンコールでは125人のコーラス隊が加わり筆舌に尽くし難い迫力に包まれ、それに続いて湯川れい子さんと登紀子さんが手を繋ぎながらステージ上に現れた。
手を取り合って少女のような笑顔で話すお二人を見ていると自然と顔がほころぶ。
湯川さんもコーラス隊の列へ溶け込み『百万本のバラ』の大合唱が始まった。
手を取り合って少女のような笑顔で話すお二人を見ていると自然と顔がほころぶ。
湯川さんもコーラス隊の列へ溶け込み『百万本のバラ』の大合唱が始まった。


普段これほどの人数の歌声を聴くことがないので、身体が驚いた。圧倒されると笑ってしまうことがあるけれど、この時の私はまさにそうだった。
こいわいはな
1994年、宮城県生まれ。『水曜どうでしょう』のイベントや書籍撮影を皮切りに、映画、ドラマ、演劇、ライブ、CMなど様々な現場で活動中。
【スチール担当演劇】 EPOCH MAN『我ら宇宙の塵』など。
【スチール担当映画・ドラマ】荻上直子監替『波紋』、岸善幸監『正欲』『サンセット・サンライズ』NHKドラマ『水平線のうた』など
X@hana_koiwai
Instagram@ohana_koiwai
1994年、宮城県生まれ。『水曜どうでしょう』のイベントや書籍撮影を皮切りに、映画、ドラマ、演劇、ライブ、CMなど様々な現場で活動中。
【スチール担当演劇】 EPOCH MAN『我ら宇宙の塵』など。
【スチール担当映画・ドラマ】荻上直子監替『波紋』、岸善幸監『正欲』『サンセット・サンライズ』NHKドラマ『水平線のうた』など
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