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ドキュメントTokiko

2019
07.
09
オーチャード2019はラブソング! 「LOVE LOVE LOVE」~愛の4楽章~<後編>

◆第二部、終わりのない愛を歌おう!

第二部の始まりの4曲はアルバム「Chanteuse Tokiko 仏蘭西情歌」からの4曲。中でも、いつか生歌で聴いてみたいと思っていた『枯葉』『行かないで』の切なさはアルバム以上に繊細で、声質、雰囲気、そのステージすべてが一体となり、まるで美しい映画の一シーンを見ているような気がしてくる。

♪ラ・ボエーム
♪枯葉
♪行かないで
♪懐かしき恋人の歌

「ジャック・ブレルの『行かないで』。これは本当に素晴らしい歌で、男の姿をここまで描いでくれるかっていう気がします。『懐かしき恋人の歌』は、本当に女を知っている男だなという感じがしますね!」
こんな歌を残してくれたジャック・ブレルを愛している気がする、と笑うトキコさん。
「もう一人、私がとても恋している作曲家アストロ・ピアソラの曲を二曲歌います。これは本当に女の心を描いているなと思います。『忘却』『リベルタンゴ』どうぞ」

♪忘却
♪リベルタンゴ

告井延隆さんのバンドネオンが弾ける。トキコさんが一瞬にしてタンゴの世界に連れて行ってくれる。客席はぐっと引き寄せられ、息をのんで聴いているように見えた。

「終わりのない愛を歌いましょう!普通の恋は別れてしまえばそれまでですが、夫が他界したときから、永遠の愛という時間が始まるのね。そのことを教えてくれたラブソングがあります。エディット・ピアフの『愛の讃歌』を歌います」

♪愛の讃歌
♪LOVE LOVE LOVE

「・・・最後に残しておきましたよ。『百万本のバラ』」
客席からは大きな拍手が沸き上がった。
「切ないラブソングなのに、なぜかとても勇気が湧く歌!太宰治が昔、こう言いました。(愛とは、情熱とは、・・・相手を無視することである)」

静まり返って聞いていた客席全体が、急に大きな笑いに包まれた。

「そうなのよ!愛する人がいて幸せというそれだけが愛ではないの。このツアーで一つの答えが見つかったわね!(笑)。愛はそこにあるとしても、形はなく、確かめることも、手に摑まえることもできない。ただただ、愛があるかもしれないという、無限大の可能性があるだけです。求め続けるということだけのなかに、愛はある。・・・『百万本の、バラ』。」

前奏が始まる。こんなかっこいい曲への入り方、あるだろうか。
トキコさんの言葉にはいつも、経験と愛情にもとづいた大きな説得力がある。それでいいのよ、大丈夫、そういって温かく背中を押してくれるような説得力。この歌のモデルとなったピロスマニも、女優への愛をただただ示しただけ。それでいい、のかもしれない。

♪百万本のバラ

曲の冒頭で既に客席全体からの手拍子。途中、演奏をとめて客席と一緒に歌うトキコさん。
「百万本のバラを~あなたにあなたにあなたにあげる・・・」
歌い終わりに笑顔で「ありがとう!・・・どうもありがとう!」と叫ぶステージ上のトキコさんに、客席から何人かが真っ赤なバラの花束をもって駆け寄った。

見渡すとオーチャードホールが、3階まで文字通り満杯、その一人一人が歌う『百万本のバラ』に、撮りながら鳥肌がたつ。このときのエネルギーは、うまく言葉にできない。

「歳月が長いということは大きな価値だなと思いました。長い時間をいっぱい身体で感じながら、歌わせて頂きました」
そして映画『紅の豚』のために作った、過ぎ去った青春の時間を感じる、あたたかな愛の歌が始まる。

♪時には昔の話を

歌い終わりに続いて、宙を見上げて朗々と、アカペラのトキコさんの声が響き始めた。
『知床旅情』。ハッピーサプライズに驚く客席とまた、大きな合唱となっていく。

「歌手になりたての頃は、コンサートの2時間のプログラムを作るのがとても大変で、一生懸命作ってきたのですが、今は700曲くらいあるんです。その中から選び、107曲に圧縮して、今年ボックス(アルバム)を作りました!」
『あなたに捧げる歌』(ソニーミュージック)、CD6枚組の大作である。

「いつか、この6枚分すべてを歌うコンサートをしたいと思っています」

客席から、「エーーーっ」というどよめきと熱い拍手が沸き上がった。トキコさんなら、冗談でなく、全然ありえると思うのは私だけではないだろう。

「できるだけ、今の四楽章を大事に、この先何年かわからないけど、人生が終わるまで歌います。ボックスのタイトルにもした、『あなたに捧げる歌』を最後に聴いてください」

♪あなたに捧げる歌

~今夜ここで逢えたうれしさ 忘れずにいたい~(作詞作曲:加藤登紀子)

トキコさんの歌声がホール全体に響き渡って、客席はその歌の粒子をいっぱいに浴びて、ホール全体が拍手の渦に包まれた。まるでここにいる全員が、一つの大きなエネルギーのかたまりのように思えてきた。歌の力ってすごい。そしてやはり、トキコさんってすごい!

人生を重ねることは、とても素敵なこと。トキコさんを見ていると、そう感じます。
若いことも良い。年を重ねていくことも良い。そして永遠の愛を歌いましょう。そんなメッセージを受け取った気がする今年のオーチャードでした。
トキコさん、ありがとうございました。
次は、フジロック(※)で歌うトキコさんを撮りに行かせて頂きます。

※7月27日(土)16時~18時、カフェ・ド・パリのステージに、トキコさんは出演されます。

(写真と文:ヒダキトモコ)





ヒダキトモコ

写真家。日本写真家協会(JPS)、日本舞台写真家協会(JSPS) 会員

東京都出身、米国ボストンで幼少期を過ごす。専門はポートレートとステージフォト。音楽を中心とした各種雑誌、各種ステージ、CDジャケット、アーティスト写真等に加え、企業の撮影も多数担当。趣味は語学とトレッキング。

Instagram : tomokohidaki / Twitter ID  :  hidachan_foto

◆グループ写真展に参加予定「日本写真家協会 私の仕事」

2019.7.11-17,
アイデムフォトギャラリー「シリウス」

2019.8.23-29,
富士フィルムフォトサロン大阪
https://www.jps.gr.jp/newface2019_exhibition/