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ドキュメントTokiko

2021
01.
19
ほろ酔いコンサート2020年(東京)~Never Give Up Tomorrow~ー➀ー

◆初めての、コロナ渦でのほろ酔いコンサート

未曽有の世界的な疫病に脅かされたまま過ぎた2020年。
泳ぎ続けていないと生きていられない鮪のようにパワフルだと誰かが言ったトキコさん。いつも新しいものにチャレンジし、人や世界や音楽に囲まれてエネルギー満タンで走り続けるトキコさんも、緊急事態宣言下、足を止めざるを得なかった時期もあった。そんな、例年と違った想いが詰まった1年を締めくくる2020年ほろ酔いコンサート。昔ほろ酔いコンサートを始めた日劇ミュージックホールと同じ場所にある、マリオン上層階のヒューリック・ホール、東京2日目のコンサートをレポートする。この日はトキコさんの77歳の誕生日にあたる。

リハーサル中のトキコさん。市松模様にあけて置かれた座席の間をぬって、ステージを見つめる。音の客席への届き方、照明の色合いや、バンドメンバーやスタッフと綿密に打合せを重ねる。丁寧に準備をして、本番では思い切り自由に!トキコさんのいつものスタイルだ。 

◆さあ、開場!!

例年であれば、大関の大きな樽酒が置かれ、振る舞い酒を片手にホールで開演を待つ人たちのざわめきが、年の瀬を感じさせてくれるほろ酔いコンサート。
でも今年は、ホールコンサートの先陣を切った夏のオーチャードの頃から、感染対策をトキコさんチームはしっかりと取ってきた。入口での検温、名前と連絡先の明記、チケット半券を各自でちぎる等、この日もしっかりとした対策がとられる中での、開場となった。
振る舞い酒は中止、代わりに会場を後にする際に特別美味しいワンカップ大関がお客様一人一人にお土産として配布された。

お土産のワンカップ大関。QRコードを読み込むと、トキコさんと自宅で乾杯気分&「酒は大関」を聞くことができる。

発売されたばかりのトキコさん自伝。なんと4時間50分に及ぶ朗読音源も付いている。

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開場時間も密を避けた状態で、マスクを外す人もいない。みんなそれぞれ、飾られた美しい花を見上げたり、ロビーを少し歩く程度で、黙って客席へと向かう人が多かった。
昨年亡くなった、医師の中村哲さんのペシャワール会を始め、日本ボランティアセンターもロビーの一角で展示、募金活動をしていた。
トキコさんがずっと応援している、それぞれの活動団体である。

◆いよいよ開演!!

一ベルが鳴り、客席は市松模様ながら一杯となり、客席の電気が暗くなると一瞬で、会場の空気はピン、となった。期待とうっすら緊張感の走る瞬間。バンドメンバーが先にステージに姿を見せ、それぞれの持ち場で演奏が始まると、会場からは大きな手拍子が起こった。そこに真っ赤なスカートに身を包んだトキコさんが大きな歩幅で笑顔で入場してくる。一曲目は今年のほろ酔いコンサートのテーマでもある、Never Give Up Tomorrow!

♪Never Give Up Tomorrow
~明日は きっと もっとずっといい
今日より きっと ずっともっとましさ~(作詞作曲:加藤登紀子)

♪Running on
太陽のような明るいエネルギー一杯の楽曲を、一気に2曲歌いきると、充実感一杯の笑顔でトキコさんがマイクを握った。

「今日のほろ酔いのメッセージはNever give up tomorrowです!最初からアンコールのような気持でスタートしました!本当に力が一杯入るコンサートにしたいと思います!」
トキコさんの存在そのものの持つ、ポジティブなパワーからだろうか。
会場全体の温度と共にみんなの心の体温もちょっと、上がったのではと思うほど、熱量を感じるオープニング。

「みんな大丈夫?色々、背負っているものが大きすぎるなら、今日は全部捨てて、ゼロっていう日にしましょう!」
客席からは歓声のようなタイミングで、拍手が上がる。

「次は、2002年の1月1日の日に作った曲。闘病していた夫も含め、家族全員で過ごした最後のお正月になってしまったのですが、丁度その日はいい天気で、平和そのものの様な日でした。宇宙の中にある、この地球を感じたのを覚えています」

歌を作る一つ一つの、人生の瞬間。写真家が、一枚一枚、命を懸けた写真を撮った瞬間のことを忘れないのと同様に、音楽を生み出す人はそれを生んだ日のことは、決して忘れられないのだろう。その日の空気の匂い、世の中や身の回りの状況、そしてその作品に込めた想い。
きっと同じだ。

♪Now is the time
優しいメロディ、ピアノで始まるこの歌の歌詞に、生命全体への大きな慈しみを感じる。
~今 この瞬間 同じ時を生きている 
宇宙の闇に浮かぶ ただ一つの星で 
それぞれの小さな窓から同じ空を見てる 
ひとはこの世に生きる全ての 命を愛せるただ一つのもの~(作詞作曲:加藤登紀子)

♪時には昔の話を
♪IMAGINE ~告井さんの英語の歌詞と、トキコさんの日本語訳~
このImagineは、自身もビートルズが大好きだというギターの告井延隆さんが、味わい深い声で原詩を歌い、それを追いかけるようにトキコさんの和訳が柔らかく語り掛ける。ジョン・レノンの残した世界観が、その和英両方があることで、尚更自然と心に染み込んでくる。

「今年はひとりぼっちで家に居ることも多くて、コンサートも出来ないので、ギターを手に取ってね。一人55周年!(笑)みたいな感じで沢山家で弾き語りをしました」
そう笑うトキコさんの胸にあふれる想いは、きっと歌に乗って今日会場にいる全員、そしてオンラインで見てくれているオーディエンスの皆さんにも届いている気がした。

続く弾き語りコーナーで、バンドメンバーが去り、ステージ上はトキコさんが一人、長年使いこんで美しい飴色のギターを手にする。語り掛けるトキコさんとの歌を、酒場でみんなで車座で聴いているような錯覚に陥るひとときだ。

ヒダキトモコ
写真家。日本写真家協会(JPS)、日本舞台写真家協会(JSPS) 会員
東京都出身、米国ボストンで幼少期を過ごす。専門はポートレートとステージフォト。音楽を中心とした各種雑誌、各種ステージ、CDジャケット、アーティスト写真等に加え、企業の撮影も多数担当。趣味は語学とトレッキング。
​Instagram : tomokohidaki / Twitter ID  :  hidachan_foto