ドキュメントTokiko
2022
07.
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13
2022.6.18. オーチャードホール「時を超えるもの」ー②ー
【後半はピアソラからスタート!】

アップテンポのマイナーコード。リベルタンゴに始まるピアソラの代表曲3曲に、日本語の歌詞を載せて歌うトキコさんの世界はスタイリッシュで、一瞬にして会場の空気がピアソラの色に染まっていく。このツアーから参加した新メンバーChicaさんのヴァイオリンの音色が美しく切り込むように、トキコさんの歌のグルーヴに華やぎを添えていく。

♪リベルタンゴ
♪忘却
♪3001年へのプレリュード
♪忘却
♪3001年へのプレリュード
ピアソラは去年が100歳、今年が没後30年だという。時代を全力で生きた人という意味で、今年のオーチャードのタイトル「時を超えるもの」に、この歌を選んだというトキコさん。

「1000年後にいったい私たちはどんなところにいるのだろうか。この歌を歌ってみると、その期待は見事に打ち砕かれるような気がします。おそらく人は1000年後も同じようなことを繰り返し、そして切磋琢磨しながら泣いたり騒いだりしているのかもしれません。でもおそらく、どれほど諍いの歴史が続いたとしても、その中で人は高らかに歌い、踊り、愛し合い、命を咲かせていくのだろうと思います」

トキコさんの歌の奥に、共通して感じられる強さとは、歴史を振り返って人間の愚かさを十二分に知りながら、それでも未来を、人間を信じる明るさにあるような気がする。
気持ちが暗くなるような出来事だらけの世の中で、有機的な土に根を張って太陽を向いて力強く咲く向日葵のような歌を、トキコさんはたくさん生み出してきた。
気持ちが暗くなるような出来事だらけの世の中で、有機的な土に根を張って太陽を向いて力強く咲く向日葵のような歌を、トキコさんはたくさん生み出してきた。
♪無垢の砂
♪リリーマルレーン
♪花はどこへ行った
♪リリーマルレーン
♪花はどこへ行った
「今日のプログラムの最後に、百万本のバラ物語を、お送りします!」
楽曲『百万本のバラ』が出来た経緯を踏まえた、ロングバージョンが『百万本のバラ物語』。元々、ラトビアの子守歌として生まれたこの歌を、朗読とオリジナルである子守歌も交え、コーラスとの壮大なオーケストレーションで歌ったのが6年前、トキコさんの50周年記念コンサートだった。ラトビアからオーケストラを呼んで、百万本のバラ合唱団と一緒にNHKホールで歌った当時の録音も、新アルバムに入っているそうなので、是非聴いてみてほしい。

ステージ上には、この日のために集まったコーラスの皆さんが9名並んだ。盲導犬を連れた全盲のシンガーソングライター大石亜矢子さんの姿も見える。前奏のピアノから、悲しみを内包したようなコーラスがダイナミックに広がる。トキコさんが加わった10名が朗々と歌う『百万本のバラ物語』の壮大な響きと一体感に、私には一瞬、会場全体がバラの海に包まれたように感じられた。
♪百万本のバラ物語

「どうもありがとう!!」
笑顔で手を振って出ていくトキコさんやコーラス隊、バンドメンバーが、ステージから姿を消しても、会場全体から湧き上がる拍手は鳴りやまない。
そのアンコールの拍手に呼び戻されるように、トキコさんとバンドメンバーが戻ってくる。
そのアンコールの拍手に呼び戻されるように、トキコさんとバンドメンバーが戻ってくる。

「今日は本当にありがとうございました。私の大切な歌を花束にしてみなさんに。本当は朝まで歌ってもいいのですけど(笑)!」というと客席から大きな拍手と笑いが沸き起こった。
「最後に、このアルバムの一曲目にやっとレコーディングできた一曲、ジョンレノンのイマジンを聴いて下さい」
♪Imagine
「最後に、去年作った川の曲を歌いたいと思います。広島から島根に流れている江の川という川をテーマに作りました。中国山地を超えて日本海に流れる川。人間の頭脳のような川ね!脳の中にある血管が全部集まったような凄い川だと言った人がいましたね。ハルピンにもスンガリーという川があります。大切に、川と一緒に生きていきたいですね」
「最後に、このアルバムの一曲目にやっとレコーディングできた一曲、ジョンレノンのイマジンを聴いて下さい」
♪Imagine
日本語に翻訳したイマジンは、いままでレコーディングが許諾されていなかった。今回はオノ・ヨーコさんから許諾を頂き、レコーディングしたという。
話は、トキコさんがボブ・ティランのコンサートをオーチャードホールで聴いた話に移り、「報道陣に、日本に行ったら何を見たいか尋ねられたボブ・ディランが、(日本に行ったら川が見たい)と答えたのを聞いて、彼はさすがだと思った」というエピソードも飛び出した。トキコさん曰く、川は、人の暮らしに一番近い、大自然だという。その川を見たいというボブは、世界を知っているのだと感じたという。
「最後に、去年作った川の曲を歌いたいと思います。広島から島根に流れている江の川という川をテーマに作りました。中国山地を超えて日本海に流れる川。人間の頭脳のような川ね!脳の中にある血管が全部集まったような凄い川だと言った人がいましたね。ハルピンにもスンガリーという川があります。大切に、川と一緒に生きていきたいですね」
♪江の川挽歌
客席が明るいので、オーディエンスの皆さんがどれだけ熱をもって拍手を送っているのかがよく見えた。その先にいるトキコさんが、最後に明るく叫んだ。
客席が明るいので、オーディエンスの皆さんがどれだけ熱をもって拍手を送っているのかがよく見えた。その先にいるトキコさんが、最後に明るく叫んだ。

「良い夏を迎えてください!(会場全体を見渡して)なんだか、素晴らしい景色よ!(笑)
この続きは、ほろ酔いコンサートでね!今年は、ほろ酔いコンサートがはじまって50回目を東京で迎えます。節目のコンサートです!・・・本当に今日はありがとうございました!」
この続きは、ほろ酔いコンサートでね!今年は、ほろ酔いコンサートがはじまって50回目を東京で迎えます。節目のコンサートです!・・・本当に今日はありがとうございました!」

夏のオーチャードと年末のほろ酔いコンサート。
年に二回、こうしてトキコさんが作り出す特別に大きな歌の輪は、それを楽しみに待つ人にとって、もしかすると心の充電器のようなものかもしれない。世の中や人生が大変な時こそ、夏を乗り越え、新しい年を迎える節目に、コンサートに来る。歌の力だけでなく、それを届けてくれるトキコさん自身のエネルギーを、改めてガッチリと感じられた今年のオーチャードホールだった。音楽は、それを生み出すひと、そのもののような気がする。
トキコさん、この夏も熱い歌と心を、ありがとうございました!
年に二回、こうしてトキコさんが作り出す特別に大きな歌の輪は、それを楽しみに待つ人にとって、もしかすると心の充電器のようなものかもしれない。世の中や人生が大変な時こそ、夏を乗り越え、新しい年を迎える節目に、コンサートに来る。歌の力だけでなく、それを届けてくれるトキコさん自身のエネルギーを、改めてガッチリと感じられた今年のオーチャードホールだった。音楽は、それを生み出すひと、そのもののような気がする。
トキコさん、この夏も熱い歌と心を、ありがとうございました!

◆セットリスト
海からの願い
色即是空
時には昔の話を
愛のくらし
生まれた街
あなたの行く朝
知床旅情
なじょすべ
声をあげて泣いていいですか
果てなき大地の上に
リベルタンゴ
忘却
3001年へのプレリュード
無垢の砂
リリーマルレーン
花はどこへ行った
百万本のバラ物語
Imagine
江の川挽歌
色即是空
時には昔の話を
愛のくらし
生まれた街
あなたの行く朝
知床旅情
なじょすべ
声をあげて泣いていいですか
果てなき大地の上に
リベルタンゴ
忘却
3001年へのプレリュード
無垢の砂
リリーマルレーン
花はどこへ行った
百万本のバラ物語
Imagine
江の川挽歌

ヒダキトモコ
写真家。日本写真家協会(JPS)、日本舞台写真家協会(JSPS) 会員
東京都出身、米国ボストンで幼少期を過ごす。専門はポートレートとステージフォト。音楽を中心とした各種雑誌、各種ステージ、CDジャケット、アーティスト写真等に加え、企業の撮影も多数担当。趣味は語学とトレッキング。
Instagram : tomokohidaki_2 / Twitter ID : hidachan_foto