New information 最新情報

ドキュメントTokiko

2024
02.
05
ほろ酔いコンサート2023 ~80歳のお誕生日、二度目の二十歳~②
【後半 素敵な人たちとのつながり】

バンドメンバーのコーラスで「ララ、ララララララ、ララララララ、ララーラーラー」とリズムが刻まれる中、滑るようにトキコさんがステージに姿を見せた。
♪哀しみのダンス
~情熱のヴァイオリンに合わせて 踊ろう燃える愛のために~

♪デラシネ
~星の数だけの哀しみ 首に飾って見せたら~

♪リリーマルレーン
~ガラス窓に灯がともり 今日も街に夜がくる~

写真を撮りながら、トキコさんの作品にずっと触れてきて感じるのは、その世界観の美しさ。
悲しさ、切なさ、喜び、怒り、色々な感情がまるで、歌うたびにほころぶ花のように胸の中に咲いていく。歌詞ひとつひとつから感じる景色は、時にはきらきらとした氷のような透明感、酒場のあたたかな灯、ひとの笑い声や温もり、太陽のにおい、風の冷たさ、旅先の異国。トキコさんの歌声を通して、心に広がっていく景色は鮮やかだ。
第二次大戦中、ドイツ人でありながら、ヒットラーの戦争に立ち向かって、連合軍の前線にまで行ったマレーネ・ディートリッヒ。以前、ジブリ映画「紅の豚」でトキコさんが歌姫ジーナ役を担当したとき、このジーナのモデルはマレーネではないか、と宮崎駿監督に尋ねたことがあるという。「ご想像にお任せします」という答えだった。その映画を仕上げている頃、5月に、マレーネが91歳でこの世を去った。お誕生日は、トキコさんと同じ、12月7日だった。

「こんな風に、遠いひとなのに、どこかで近いような気がしてしまう。ユーラシア大陸の西のほうで戦争があったとき、マレーネはいた。私はそのころ、ユーラシア大陸の極東のハルピンにいた。何かつながりを感じずにはいられないですね」

そう語るトキコさんは2023年、4年越しの計画だったジョージアでのコンサートを実現した。ジョージアは、『百万本のバラ』のモデルとなった画家ニコ・ピロスマニの故郷。

「ニコ・ピロスマニの途方もなく大きな失恋の物語のなかに、どんなに届かない恋でも、それを伝えようとしたことは素晴らしいというメッセージが込められていたと思います」

「今日は私の生まれたハルピンのことを歌った「遠い祖国」、それから私の思いもこめて和田アキ子さんに送った、「今あなたに歌いたい」。私の故郷への思いをつづってみたいと思います」
♪雨音
♪遠い祖国
♪今あなたに歌いたい
♪IMAGINE
♪百万本のバラ(手拍子)
鳴りやまぬ拍手の中で、トキコさんが名残惜しそうに見えた。
「・・・終わっちゃうね! 今日のプログラムの最後に『知床旅情』を歌います」

森繁久彌さんが1960年にこの歌を作って、その10年後に私が歌って、そこから50年が経ちました。去年、改めて受け止め治したいと思ってレコーディングをし直しました。その新しいアレンジで、聴いてください。『知床旅情』」
♪知床旅情

客席はまだまだ終わりたくないという空気に満ちていて、拍手がなりやまず、アンコールの声があがる。それに応えるかのように、みんなで歌える『乾杯』の演奏が始まった。

「カンパーイ、カンパーイ、カンパーイ!」と客席も一緒に大合唱となる。
♪乾杯

拍手が鳴り終わらないうちに、おもむろにアカペラでトキコさんが歌いだす。

~白い花なら百合の花~

♪酒は大関

途中、慣れたファンからの「ソーレ!」の掛け声に客席は笑いに包まれた。
「もう本当に、終わってしまいますね。でもいつも、終わりは始まりですから!」
そう言って一升瓶を片手に微笑むトキコさん。

「本気でもう一回言います。皆さん、また本当にありがとうございました。
忘れたくない、大事な一日を、迎えることができまして、やっとハタチを迎えることができました、ありがとう!」

タブレット純さん「ちなみに、僕が着ている衣装はジュリーの、TOKIOの時の衣装です。ちょっとワンフレーズやってみます!」

トキコさん「そうなの??」
♪TOKIO

突然タブレット純さんの美声で響く沢田研二さんの『TOKIO』に客席は大盛り上がり。もちろん、TOKIO の部分は TOKIKOへと置き換えられている。

「TOKIKO! TOKIKOが空を飛ぶ~!」
その瞬間のトキコさんの笑顔は、本当に嬉しそうでシャッターを押しました(上)。

「ほんとうに嬉しいわ!最高のプレゼントでした!」

そう言いながら最後にトキコさんが選んだ一曲。
「『わが人生に悔いなし』、お送りします。歌って下さった石原裕次郎さん、作詞して下さったなかにし礼さん、お二人とも私の心の中にいます」

一瞬しんみりしそうな雰囲気になった客席の皆さんだったが、次の言葉で笑いに変わる。
「(客席にむかって)あ、皆さんも、あの世にいっても絶対私の心の中に残ってるからね。大丈夫よ!(笑)そんな思いで、聴いてください」

♪わが人生に悔いなし

トキコさん「最後にみなさんと写真を撮りたい!」
客席バックに、記念写真を撮った。

「せーの!」「トキコーーーーー!!!」
あっという間の楽しい時間の思い出、一枚の写真。

客席は笑いに包まれながら、熱いアンコールの拍手は消えない。
もう準備していたはずの楽曲はすでに全部終わっている。
どうするのかな?と思いながら客席に戻って待てば、やはりトキコさんは戻ってきた!

「こうなると思ったんだけど!(笑)」と笑いながら、アップテンポの元気の出る一曲のタイトルを叫んだ。
「Never Give up Tomorrow !!」

疾走感のあるイントロが始まり、ワーっと立ち上がったお客さんとステージの間に、カメラを持って滑り込んだ。

♪Never Give up Tomorrow
~明日はきっともっとずっといい~

会場がひとつの大きな生命体のように躍動し、歓喜の拍手の中、トキコさんの一声。
「Never give up Tomorrow !」
そして、2023年最後のほろ酔いコンサートはついに終わった。

カメラを抱え、汗びっしょりになって楽屋エリアに戻ると、もうサイン会へと足早に向かうトキコさんの背中が見えた。トキコさんには、ずっとずっと元気で、歌い続けてもらいたいです。
トキコさん、素敵な歌の世界を、ありがとうございました!


ほろ酔いコンサート2023 ~80歳のお誕生日、二度目の二十歳~①へ

(写真と文:ヒダキトモコ)




ヒダキトモコ

写真家。日本写真家協会(JPS)、日本舞台写真家協会(JSPS) 会員

東京都出身、米国ボストンで幼少期を過ごす。専門はポートレートとステージフォト。音楽を中心とした各種雑誌、各種ステージ、CDジャケット、アーティスト写真等に加え、企業の撮影も多数担当。趣味は語学とトレッキング。

​Instagram : tomokohidaki_2 / Twitter ID : hidachan_foto