ドキュメントTokiko
02.
♪イマジン
あたたかな登紀子さんの1コーラス。2コーラス目は柔らかな告井さんの歌声、英語の歌詞のあとに、登紀子さんが日本語で追いかける。満員の客席からは大きな拍手の波が広がっていく。
♪悲しき天使
むせび泣くような渡辺さんのヴァイオリンからはじまり、サビでは客席から手拍子が響いた。更にテンポアップしてもついてくる手拍子。その盛り上がりの中、あたたかいヴァイオリンとピアノで、リリー・マルレーンが続いた。
♪リリー・マルレーン
歌い終えたトキコさんが客席に微笑みかける。
「(私は)マレーネ・デートリッヒです(笑)。皆さんもよくご存じだと思いますがこの歌は元々ドイツで生まれ、その歌が連合軍の兵士にまで愛されて、マレーネがスターの座をなげうって、1943 年から連合軍の前線まで行って歌っていました。私はちょうどその年の師走にユーラシア大陸の反対側の端で生まれました。マレーネと私は誕生日が同じで、つながりを感じずにはいられません。彼女は70歳まで、戦争にかかわる場所に行って歌って歩いた女優です」
♪遠い祖国
♪今あなたに歌いたい
♪百万本のバラ
トキコさんがハルビンを思って作った作品『遠い祖国』から 3 曲、一気に名曲が続いて客席は手拍子で大盛り上がり、大合唱となる。
会場からは割れるような拍手が起こる中、最後に今日はもう一曲、私のオリジナル曲を歌いたいとトキコさん。
「私がうまれたハルピンにも川がありました。スンガリーという川です。引き揚げてきた京都にも鴨川があります。そして、千葉県の鴨川にも。川が国境だったり、戦場だったりすることもありますが、いつも川は人々に寄り添うために、人と人をつなぐためにあるものだと思います。今日の最後に川は流れるという曲を聴いてください」
♪川は流れる
鳴りやまない拍手。コールや掛け声も響く。アンコール!
一瞬の間があって、そのまま(知床の岬に〜)、と始まると会場は驚いたように、嬉しそうに沸いた。登紀子さんが歌詞を先に言ってくれると、みんなが一緒に歌い、会場全体がゆるやかなハーモニーとなって、あたたかな空気で満たされていく。
♪知床旅情
歓声と拍手の渦が広がる中、トキコさんの一言にまた会場は笑い出す。
「今日は客席がよく見えますが、年齢の幅は相当広いですね!これからまだまだ頑張って生きようという人と、そろそろ終わろうという方と・・・(客席は大爆笑)どちらも今日は未来のためにありますので、明日がもっと素敵であるように!がんばろう!」
呼応するように、客席からは熱気のようなものが立ち上る気がした。こうして見渡せば、客席の皆さんは確実に、トキコさんの歌から元気をもらっているように感じられる。
最後の曲は、トキコさんが 2010 年に作った作品。
「これから色んな人が人生の旅立ちを迎える、そんな人たちにエールを送りたいと思って作った曲です。聞いてください!」
♪君が生まれたあの日
〜海はあまりに広く 舟はちっぽけだ〜
〜急がずに恐れずに つまずいても歩いて行け〜(作詞作曲:加藤登紀子)
鳴りやまない拍手の中、トキコさんが笑顔で手を振った。
「みなさん、元気でいてください。どうもありがとう!」
汗をびっしょりかいて、カメラを下ろすと心は静かに満たされていた。毎年、夏のコンサートと年末のほろ酔いコンサート。どちらも大切な心の栄養であり、それまでの半年や一年の、足元を振り返り、より明るい明日へと元気にみんなで乾杯するような大切な節目でもある。
世の中を含め、色々なことがその時々で起こり、自分の中でも変化があり、でもトキコさんのコンサートを聴くと(撮ると)、「でも、そういうこともあるよね」「あきらめないで行こうね、みんなでがんばろうね」と言われているような気持ちになる。
自然に元気を与えてくれているトキコさんの歌。秋からはついに 60 周年イヤーへ突入されるので、私も日々前進、成⻑して、ドンドンと進んでいく速足のトキコさんに置いて行かれないように。私も自分の道をしっかりと走ってついていこうと思います。
この夏も素敵なコンサートをありがとうございました!
ヒダキトモコ
写真家。日本写真家協会(JPS)、日本舞台写真家協会(JSPS) 会員
東京都出身、米国ボストンで幼少期を過ごす。専門はポートレートとステージフォト。音楽を中心とした各種雑誌、各種ステージ、CDジャケット、アーティスト写真等に加え、企業の撮影も多数担当。趣味は語学とトレッキング。
Instagram : tomokohidaki_2 / Twitter ID : hidachan_foto